「極右」でもなければ「極左」でもない。
「極私」な在り方を模索する janjan の超極私的・思考再活性化ブログ...
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本稿は、janjan 一個人の極私的考察を吐露したものに過ぎません。従いまして、読者諸兄各位の購買行動、選挙行動、抗議行動、或いはその他行動の意思決定に際し、本稿内容をその根拠とされることを、わたくしは推奨いたしません。
極私的「万年筆」考 (1)
パロット≠(ノットイコール)万年筆……?
いささか唐突ではあるんですが、パイロット(Pilot)という文具メーカー、わたしの中では「万年筆メーカー」ってことになっています。だれが何つったって、わたしにとってのパイロットっちゃー「万年筆」だったんですよ。ところが、先日、わたしのこの認識が唐突に瓦解(がかい)する事件が発生するんですねぇ……。
まだ二十代の同僚が使っていた消しゴムに目が留まったわたし。あら、パイロットの消しゴムですかぁ……。ふーん、パイロットって、消しゴムも作ってたんですねぇ……。怪訝(けげん)そうな顔でわたしを凝視(ぎょうし)する彼。えっ……、パイロットの消しゴムって、そんなに珍しいですかぁ? だって、あーた、パイロットっちゃあ万年筆でしょうがね。今度は、彼のほうが吃驚(びっくり)する番で、えっ……、パイロットって万年筆も作ってたんですか?
一瞬、耳を疑っちゃいましたよ。わたしのことをからかってるんじゃないかと勘ぐりながら、再度確認するんですが、彼、本当に「パイロット=万年筆メーカー」って認識がないんですね。わたしの中では「すべての日本人が共有しているはずの認識」を彼は持っていなかった、って事実に気づく瞬間でありました。彼にとってのパイロット社ってのは、ノートやらボールペン、消しゴムなんかを作ってる「ごくごく一般的な文具メーカー」ってことにしかならないみたいなんです。
でも、考えてみれば、そうゆーことになっちゃうんでしょーなぁ……。最近、万年筆を使うシーンって、なかなか出くわしませんもんねぇ……。彼の頭の中には「万年筆で文字を書く」って発想もなければ、動機もないのでしょう。従って、「文具店で万年筆を物色する」という行為も、彼にしてみれば「思ってもみないこと」ってことになっちゃうんでしょうね。
だけどね、少なくともわたしにとっては、万年筆って、それほど疎遠(そえん)なものじゃないんですよ。日ごろの作文作業では、もちろんマック(Mac)やらウィンドウズ(Windows)やらにもお世話になってるんですけど、けっこう万年筆だって使ってるんです。十本前後の万年筆をとっ替えひっ替えしながら、現在でもけっこう楽しみながら使い続けています。
というわけで、今回のテーマは「万年筆」です。
陽水前と陽水後……
さみしさのつれづれに 手紙をしたためています あなたに 黒いインクがきれいでしょう 青いびんせんが悲しいでしょう……(以下略)
1973年9月に発売された井上陽水(いのうえようすい)氏の『心もよう』です。あらぁー……、もう40年も前の楽曲なんですねぇ……。あたしゃ、何でこんな曲を知ってるんでしょーねぇ……。でもまあ「知ってる」って事実は隠しきれないので、ありていに書いちゃいます。上の文章を書いていたら、脳裏にふんわりと甦(よみがえ)ってきたのが揚水さんのこの曲だった、ってわけです。
だけど、あたしは、なにもここで70年代フォークについての論を展開しようとしているわけじゃございませんですよ。あたしには、フォークソングについてのあれやこれやを論じる技量も知識もございませんしね……。
そうなんです……、上の歌詞を読んでいただければ解っていただけると思いますが、1970年代って、手紙といえばまだ万年筆だったんです。だって、あーた、そのころは、ワープロ専用機すらまだ登場していなかったんですよ。東芝さんが、本邦初の日本語ワープロ、「JW-10」を世に送り出したのは1978年だったそうです。当時のお値段が「630万円」! 吃驚(びっくり)! わたしが、同社の「ワープロ専用機(Rupo JW-R50F……だったかなぁ)」を手に入れるのは、それから、さらに数年あと、ってことになります。
ここで何を言いたいのか、っていうと、つまり、わたしのような「万年筆使い」と、上に挙げた若い同僚みたいな「非万年筆使い」との境目がどこにあるのかを突き詰めてみれば、ま、きっとこの辺りなんだろうなあ、って考えるわけなんですよ。
わたしの世代だと、中学校の制服の胸ポケットには「万年筆が1本ささってる」ってのが多かった、って思うんですよね。学研やら小学館やらが当時販売していた学習誌(『中1コース』とか『中1時代』って雑誌です。こんな雑誌も今はもう売られてないみたいですけど……)の年間予約に対する景品が万年筆だったと記憶しておりますですよ。定期購読に対するプレミアムですから、言ってしまえば「ただのおまけ」です。お世辞にも「結構な品」ってわけじゃないんですけど、それでも、文字を筆記するという機能だけを見れば、ちゃんとした万年筆でしたよ。だから、そんなプレミアムにつられてうっかり学習誌を年間予約してしまったって生徒さんも、結構いたんじゃないのかなあ……。そんな事情もあって、わたしたち世代の多くが、それとは直接分からない強制力を行使されつつ「万年筆使いへの道」をちゃくちゃくと歩き始めることを選択させられる、ってことになるわけなんですよ。今にして思えば、これは、学習誌に万年筆を提供することで、将来にわたる自社製品の販路を開拓することを目途(もくと)とする万年筆メーカーの深謀遠慮(しんぼうえんりょ)だったんじゃないかって勘ぐっちゃいますよねぇ……。
わたしたち以前の世代が「井上陽水前」だとすると、「井上陽水後」の世代が「非万年筆使い」てことになるんでしょうか。理由はやっぱ、上に挙げた東芝の「JW-10」なんでしょうなぁ……。手書き文字よりかは、印刷文字のほうがはるかに読みやすいですもの。あたし自身は、万年筆をよく使うほうだと自負しておりますが、言っちゃあ何ですけど、あたしの文字の汚さといったら筆舌に尽くしがたいレベル。ときどき、自分でも読めない、ってこともあるくらいですから、それをここで衆目(しゅうもく)に晒(さら)すなんて勇気はございませんです。
かの国の万年筆がちょっと気になる
ある日のことです。いつものようにアマゾン(Amazon)界隈(かいわい)をぷらぷらとウィンドウ・ショッピングしてたら、とある万年筆のユーザー評価欄にちょっとばかり気になる書き込みがあって、わたしは「あららぁ……」て思っちゃいましたねえ。曰く「インクが乾かず、ちょっとこすっただけで文字がかすれてしまうので、星2つ」なんだそうです。あらあら、「万年筆」って、元来(がんらい)そういう筆記具なんですよ。それを解決するための道具だってちゃんとあるんですよ。……って、今でもあるのかなあ……吸い取り器。
あ、あったあった。ググったら、下の写真が見つかりました。そう、こんなやつです。最近ではすっかり見かけなくなりましたねぇ……。もちろん、こんなもなあ、わが家にもございませんですよ。
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| クラウン・吸取り器(フジヤ文具店) |
ですけどね、いつぞや、それを実に実に久しぶりに目にしたんですよ。亡くなったってニュースが先だって届けられた北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の金正日(キム・ジョンイル)さんとどなたかの調印式のニュース。ひょっとしたら、正日さんの隣には小泉純一郎さんが座ってらしたのかもしれませんが、記憶も確証も、すっからかん。それがいつのことで、なんの調印だったも忘却しております。それでも、その映像を今も覚えている、っていうのは、正日さんの、万年筆を使ってサインしたあと、吸取り器を使ってインクを乾かしているってシーンが、わたしの脳裏に鮮烈に残っているからなのであります。
わ、すげっ……、北朝鮮は、吸取り紙が現役だ!
北朝鮮では、万年筆が、ちゃんと吸取り紙とセットになって働いてるのね、などと、まことにおまぬけなことを考えていたものです。
万年筆派のわたしときたら、ここで、正日さんの手にある万年筆が、無性に気になっちゃうんですね。彼は、一体どんな万年筆を使ってたんだろう……、って。だけど、ニュース映像を拡大してみたところで万年筆のメーカーまで判断することなんてできないわけで……。
ひょっとしたら「Made in D.P.R.K( Democratic People's Republic of Korea=朝鮮民主主義人民共和国)」万年筆かも……。だったらこれは「ちょっと使ってみたい」かも……、って。ったって、これは、なにも、わたしが同国を信奉(しんぽう)している、ってわけじゃないんですよ。言ってみれば、今まで手にしたことのないものに対するちょっとした興味ていどのものでしかないんですけどね。だって、あの国の「将軍様」が使う万年筆ですよ。ひょっとしたら、人間国宝級の超一流技能保持者の手になるハンドメイドで……、軽く握っただけで丹念に磨きこまれたエボナイト製の軸が指に吸い付いてきて……、重みやバランスも絶妙で……、24金が眩(まぶ)しく輝くペン先は紙の上を限りなくなめらかにすべって……、自分の意志とは関係なく、ペンが勝手に原稿用紙の上を随意に走るみたいに文章が紡ぎ出されて……、気がついてみたらいつの間にやら夜が明けていて……、ほっとため息つきつつ机の傍らに目を転じると、そこには読みやすい文字でます目が埋められた原稿用紙の束。ほう、結構書いちゃったなあ、などと、手に取って最初から読み返してみれば、これが自分でも惚れ惚れするぐらいのたぐいまれな名文で……なんて想像してたら、プロの物書きじゃなくったって、わ、これは絶対使ってみたい……ってなっちゃうじゃないですか。
個人輸入してみた……かの国の万年筆じゃなかったけどね……
とは言うものの、北朝鮮製万年筆を手に入れるすべなど、あたしは持ち合わせていないわけでして……、そうなると、微妙なフラストレーションがあたしの中に鬱積(うっせき)するんですね。わ、使ってみたい使ってみたい使ってみたい使ってみたい……って。そんなフラストレーションの渦巻きみたいなのが頭の中でグルングルン回っているわけですよ。わ、やば……、こんな渦巻を放置しといたら頭が壊れちゃう! あたしの頭なんざあ、ただでさえがたがきていて、今にも崩壊しそうなのに、その上それを幇助(ほうじょ)するような要因を放置しておくなんて、危険この上ないわけですわ。何とかしなくっちゃ……。
必死になって、わたしなりに、窮余(きゅうよ)の策を考えてみましたよ。で、ない知恵をぎゅぎゅぎゅーっと絞り出したのが次の一策。北朝鮮製は無理でも、中国製だったらそれに近いものが手に入るかも……、って考えたわけです。通販サイトを物色してみたら,フフフフ……、ちゃんとありましたですよ、中国系通販サイト。ヤフー(Yahoo!)系ショッピングサイトの「チャイナ・モール」。ここから入ると、中国の通販サイト、「淘宝网」に入店できるんです。わ、あったあった! 英雄(HERO)印の中国製万年筆。写真を見ると、なかなか良さ気じゃないですか。それに「おねだんも安い」し……。わたしは、思わず、まとめてカートに入れちゃいました。
中国製万年筆……、これを読んでいらっしゃる読者諸兄の皆さんも、それがどういうものなのか、ちょっとは気になるんじゃないですか……? だけど、その顛末(てんまつ)については、次回以降の本稿に譲ることといたします。
To be continued...(#004へ移動)

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